「山伏の頭襟(ときん)」 …

「山伏の頭襟(ときん)」

昨年の松本ジャポニスムで絵本の読み聞かせの企画のために山伏の衣装を作った。こうやって見直すとあまり出来がよくないな、などと思ってしまうが、製作中は夢中で楽しかった。

例えば、肩からかけているポンポンのついた結袈裟(ゆいげさ)にも制作秘話がある。

イメージするきらびやな布を見つけられずにいたとき、毎日通るお寺の庭の楓の枝に輪袈裟(わげさ、簡略化した帯状の袈裟)がぶら下がっているのを見つけたのだ。緑の地に金糸や銀糸で模様が描かれており、まさに求めていたものだった。これにポンポンをつければ一気に解決する。
これは仏さまが私にお遣わしになったに違いない(お寺だから)。そう思ったのだが、信心のためのものを拝借して悪いことが起きたりするのではないだろうか。そもそもタイミングが良すぎて罠なのかもしれない。死んで閻魔さまの裁きを受けるとき、浄玻璃の鏡の中には猫背の私が袈裟を盗んでいる姿が映っているのだ。
「お前などは地獄行きじゃ!」

そんな妄想もあり、その場で拝借することはなかったのだが、雨ざらしになり、鳥の落し物で汚れたりしていくのをひと月ほど眺めているうち、住職とお話しする機会が訪れた。

「あの輪袈裟、ずっとありますね」
「ああ、誰の物か分からないんですよ、落ちていたのを私が拾って木にかけたんです」
「もらってもよいでしょうか、山伏の結袈裟を作りたくて」
「やまぶし?…山伏?」

このようなやりとりの後、理想の結袈裟を作ることができた。

そして頭につけているのが今回の本題、頭襟もどきだ。

黒以外の色も欲しいと思い、再度作ってみた。

画用紙を正方形にカット。

折り目をつけて。


立体になるように糊付け。


切れ目を入れ、芯となる輪っかに糊付けする。

ここで余分な部分を切り取ったり、微調整をしている。

穴を開けて紐を通せば…

ほら!





お近くの方はかぶりにきてください。










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2023年02月01日 Posted by松本ジャポニスム実行委員会 at 19:14 │Comments(3)

この記事へのコメント
中学生の息子が英語祭で「柿山伏」を演ずることになり、装束一式を私が手作りすることになりました。「山伏 梵天」でこちらに辿り着きました。
頭襟の作り方、助かります!。お椀を使おうと思っていた(だるまちゃんみたいに)のですが、これなら作れそうです。
結袈裟はYの形(サスペンダーみたいですね)とのことですが、前側下(Yの2本の間。ピーラーの刃のような部分)を橙色の紐のようなもので繋いでいませんか?
この作りがわからなくて悩んでいます。去年のことなので、もうお忘れかもしれませんが、覚えていらしたら教えていただけないでしょうか。
それから法螺貝はどうされました?。竹で自作されたようでしたが、この写真には写ってないようですね。
お返事いただけたら幸いです。
Posted by 波田伸衣 at 2023年09月22日 00:46
この時の「かきやまぶし」読み聞かせに法螺貝は用意できませんでしたね。持たせたかったですけど。

その後、竹ボラを自作しましたが、音はかなり近いです。少し練習が必要ですが、面白いので余裕があれば作ってみるといいと思います。雰囲気づくりにはもってこいです。

結袈裟についてはおっしゃるとおり、橙の紐で2本を結んでいます。一絡げにした訳でなく、そうですね、ピーラーの刃のように2本を紐で渡す様に2箇所結びました。
刺繍糸でタッセル状のフサフサを2つ作り、結んだ後に紐の端にそれぞれ縫いつけた様な気がします。

もはや何を参考にしたのかも覚えていないくらいですので、正しいのかもわかりません。

この結袈裟、演じているとかなりズレてきます。何箇所か衣に縫い付けておくことをお勧めします。

息子さん、上手くいくと良いですね!
Posted by 松本ジャポニスム実行委員会松本ジャポニスム実行委員会 at 2023年09月30日 11:55
詳細を教えていただき、大変参考になりました。
房も自作したのですね。すごいです!
結袈裟がズレてくること、実際に演じてないと分からないことですね。本当に助かります。数箇所、縫い止めることにします。
10月に入り、いよいよ納期が迫ってきました。制作、頑張ります。息子へのエールもありがとうございます!
Posted by 波田伸衣 at 2023年10月01日 23:50
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